こんにちは。
今回は、先日オーストラリアのドキュメンタリー映画『甘くない砂糖の話』を観て面白かったので、その感想です。
Amazonプライムビデオでも見られますので、プライム会員の方には特におすすめです。
世の中に食品に蔓延している『隠れ糖質』について、改めて考えさせられる映画でした。
映画の内容はざっとこんな感じです。
健康的な食生活を送っているオーストラリア人俳優のデイモン・ガモーが、オーストラリアの一般家庭が消費する砂糖の量に驚き、たくさん砂糖を摂ったら体にどんな影響が出るのかを自分の体で実験してみた、というストーリーです。
実験をするにあたり、作家、臨床病理医、栄養士、健康管理など各分野のエキスパートを集めた専門家チームを作り、実験前・実験中・実験後の体の変化を観察・分析するというかなり本格的なプロジェクトになっていました。
およそ2か月にわたる実験の記録映画で真面目な内容ではあるけれど、テンポが良くて編集・演出もコミカルでふざけた感じなので、飽きずにあっという間に観られる作品です。
オーストラリア人の砂糖の摂取量はティースプーン40杯!
まず一日で摂る糖質の量は、オーストラリア人の平均とされるティースプーン約40杯分。
ここではティースプーン1杯分を約4gとカウントしていたので、一日で160gもの砂糖を摂ることになりますね。うわあ。
実験を始めるにあたり、デイモンは専門家チームに1日ティースプーン40杯分もの砂糖を摂るには、何を食べたら良いか相談します。
やっぱりジャンクフードやお菓子が良いのだろうか?と。
それに対する答えは意外なものでした。
ティースプーン40杯分の砂糖を摂るのに、お菓子もジャンクフードも必要なく、スーパーに売っている『健康的な』加工食品を食べるだけで十分だと。
というわけで実にシンプルなルールで実験が始まります。
食品はスーパーで買えるものばかり。
- 優先して選ぶのは『健康的な低脂肪食品』。
- 一方でコーラなどの清涼飲料水やお菓子、アイスは除外。
- カウントするのは『砂糖』と『果糖』のみ。
これだけです。
実際にデイモンが初日の朝食に選んだのは、一見健康的な食品。
シリアルに、ヨーグルトに、リンゴジュース。
けれどそれらに含まれる砂糖の量は想像以上でした。
- シリアル…ティースプーン7杯
- ヨーグルト…ティースプーン4杯
- リンゴジュース…ティースプーン9杯
実に一日のノルマの半分、ティースプーン20杯分もの砂糖・果糖を朝食だけで摂ってしまったのです。
この実験のカウント対象は砂糖と果糖のみなので、シリアルそのものの糖質全体を入れたら更に凄い量になりそうですね。
彼は実験を開始してまもなく、ジャンクフードや菓子を食べなくても1日スプーン40杯は簡単に口にできてしまう事実に気づきました。
実際、この量を砂糖単体で食べるとなると、相当きついです。
彼は実験期間中、砂糖入りの食品を食べる代わりに、そこに含まれているのと同じ量の砂糖を食べる実験を行いました。
市販のフローズンヨーグルトを食べる代わりに無糖のヨーグルトに砂糖を11杯振りかけたり、ローストチキンに照り焼きソースをかける代わりに、砂糖を4杯かけたり。
映像で見るとかなりの衝撃で、見ているだけで口の中がざわざわしてきました。
本人もなんとも表現できない凄い表情をしてましたね。
砂糖だけで同じ量食べるのは大変なのに、これが食品のなかに隠れてしまうと、無理どころか美味しく食べられてしまうというのは皮肉です。
アボリジニの町やアメリカの片田舎で砂糖に侵された人々と出会う
実験は更に進み、デイモンは自分の体で実験するだけでなく、砂糖の摂りすぎが人々に与える影響を自分の目で見るために取材旅行に出ます。
まずはオーストラリア北部、先住民族アボリジニの人々が住む町。
オーストラリア先住民族のアボリジニは、数十年前までは伝統的な狩猟採集民生活を送り、野生の動物や野菜のみを食料としてきましたが、白人の入植により欧米の食文化が急速に進みました。
狩猟採集生活をしていた頃は糖質の摂取はほぼないに等しく、野生のエミューやカンガルー、七面鳥などから脂質やタンパク質が豊富な食事で引き締まった健康体を持っていました。
けれど欧米の食文化で大量の糖質が手軽に手に入るようになると、彼らはたちまちその虜になったのです。
その消費量はすさまじく、特にコーラなどの清涼飲料水は彼らを夢中にさせ、2008年にはオーストラリア北部がコカコーラ社の売上率世界一になったほど。
その地の主な消費者は、当然そこに住むアボリジニの人々でした。
糖質の摂取量が激増したことによって、当然彼らには様々な健康への被害が押し寄せました。
子どもの頃から大量の砂糖入り食品に親しむことで、肥満や糖尿病などの生活習慣病で若くして亡くなる人や透析生活を余儀なくされる人が後を絶たなくなったのです。
彼らを救うために有志による栄養教育や生鮮食品の提供などの試みもなされましたが、政府が突然援助を打ち切ったことで頓挫し、今でも彼らは糖質まみれ・生活習慣病まみれの生活を送っています。
次にデイモンが訪れたのは砂糖産業のメッカ・肥満大国アメリカ。
彼はケンタッキー州の田舎町を訪ねますが、そこではペプシコ社の清涼飲料水が人々の生活に深く根付いていました。
特に大人気なのは『マウンテンデュー』。
1.25リットルのペットボトルにティースプーン37杯分の砂糖、コーラの4割増しのカフェインが含まれた清涼飲料水です。
ここの住民の多くはマウンテンデューを物心がつく前から飲み始め、1日に何本も、四六時中飲み続けています。
それこそ、親が哺乳瓶に入れて与えているので、幼少期から砂糖汁づけになっているようなものです。
デイモンはここで17歳の少年に出会いますが、彼も子どもの頃からマウンテンデュー中毒。
彼の歯は全て虫歯に侵されてまっ茶色に爛れて溶けていて、結局彼は全ての歯を抜き、総入れ歯にする羽目になってしまいました。
その地域で活動する歯科医によると、これは珍しいことではないのだそう。
個人的にアメリカ人はもっとデンタルケアに力を入れているイメージがあったのですが、どうやら裕福でない田舎の方は事情が違うようです。
このかわいそうな少年の母親も、未成年なのに歯をすべて失うことになる息子に心を痛めていましたが、幼少からマウンテンデューを大量に飲ませていたことが原因だという基本的な知識もなかった様子でした。
それはこの地域の大部分の住人に共通することなのでしょう。
教育の格差は健康問題をも引き起こすという事を改めて実感しました。
これは先のアボリジニにも共通する問題ですね。
少年は重度の虫歯で感染症にかかっていて、糖質過剰摂取でアドレナリンが出過ぎているせいで、歯肉への麻酔も効かず、抜歯の痛みで悶絶していました。
その様子だけでも衝撃的だったのですが、彼はそんな苦痛を体験しながらも、これからもマウンテンデューは飲み続けたいと言っていたことに愕然としました。
アボリジニの人々にしても、マウンテンデュー中毒の人々にしても、どうして健康を損ねてでも砂糖の過剰摂取を止められないのでしょうか。
その背景には企業の絶え間ない『努力』がありました。
砂糖がたくさん入った飲み物や食べ物は、どうして人を虜にしてしまうのか。
砂糖には中毒性があります。
その中毒性の強さはコカイン以上とも言われています。
そもそも本来は自然界に存在する果糖もめったに口にできなかった希少なもので、人間の体は貴重な果糖を口にすると、脳からドーパミンが放出され、全力で吸収して身体に蓄えようと働きかけます。
これは糖分がほとんど手に入らないのが当たり前だったからこそ必要な働きですが、現代のように人類史上あり得ない量の糖分を摂取できる環境では、むしろ体にとっては有害でしかありません。
そんな人間の性質を逆手に取って莫大な利益を得ているのが、清涼飲料水などを生産する大企業です。
アメリカから世界を席巻する巨大な飲料メーカーは、長年にわたり人々が最も虜にー中毒になる糖分量を研究しつくして商品開発をしてきたのです。
デイモンは大手飲料メーカーの事情に詳しい専門家に話を聞きに行きました。
ある清涼飲料水の重鎮は、商品開発の際に、飲み物に含まれる砂糖を増やす程、売り上げが伸びるけれど、一定のラインを超えると人気がなくなることに気づき、その境目となる最適値を元に商品を生み出して莫大な利益をもたらしたとのこと。
その最適値は業界では『至福点』と呼ばれているそう。
至福点はその後、清涼飲料水だけでなくシリアルやパスタソースなど、あらゆる加工食品に応用され、人々の食生活に浸透してくようになりました。
人々はこうした至福点を追求した食品を食べれば食べるほど、もっと食べたいと欲し、中毒になっていきます。
こうした食品は、子どもをターゲットにした商品でも大量に流通しています。
それも『健康食品』という皮をかぶって。
これだけ中毒性の高い商品を大量に売りながらも、大企業側は『消費者が肥満や生活習慣病に陥るのは消費者の選択の問題であり、自己責任』だという姿勢を崩していません。
デイモンをはじめ、この実験をサポートする人々はこうした企業のあり方に怒りをあらわにしていますが、こうした巨大になり過ぎた砂糖産業に働きかけて変えることは現実には難しいと思います。
できるのは、私たち消費する側が正しい知識を身に付けて、こうした隠れた砂糖を含めて糖質の過剰摂取をストップしていくことだけです。
砂糖を毎日ティースプーン40杯分摂り続けた結果
デイモンの体はたった2か月の実験期間で、体重もウエスト周りも内臓脂肪も跳ね上がり、気分の変調や疲労感など様々な悪影響が現れました。
しかも実験前と摂取カロリーはほとんど変わらないのに。
同じカロリーの数値でも、もともとは良質な脂質とタンパク質がメインだったのが、実験中は砂糖・果糖がメインとなり、カロリー源が全く異なっていたのです。
大事なのはカロリーの数値ではなく、カロリーの質であることは明白。
救いなのは、実験を終えて2か月ほどで、彼の体が元の健康な状態に戻ったという点です。
まとめ
一見健康食品の顔をしていても、実は糖質まみれな食品は身近なところにあふれています。
私自身は糖質制限・高タンパク・メガビタミンを始めて半年以上経ち、質的な栄養失調が改善されて体調が整ってきたので、そろそろ糖質を更に抑えて良質な脂質へエネルギー源を切り替えていこうと考えています。
そんな矢先にこの映画を観たことで、普段無意識に食べている食品にも思った以上の糖質が含まれているかもしれない、という事に気づかせてもらいました。
気軽に楽しく観られる映画ですが、とても気づきの多い作品です。
次の段階に進むためにも、普段口にしている身近な食品を注意深く見ていこうと思います。
それではまた。