今回は美容と健康に欠かせない『脂質』について掘り下げていきます。
これまで高タンパク・ビタミン・ミネラルの重要さについては、このブログで何度も取り扱ってきました。
私自身、高タンパク食・メガビタミン・糖質制限を始めてから半年以上経ち、続けていくにつれ糖質への欲求がどんどんなくなっていくのを実感しています。
少し前まではまだ、たまにスイーツやパンを食べたくなることがあったのですが、ここ2か月位はそうした欲求が起こる機会がめっきり減って、最近では甘いものやパンなどを一口も食べない日がほとんど。
以前は美味しそうなスイーツやパンを見かけたら素通りできなかったのに、今では欲が沸くどころか景色の一部として通り過ぎてしまうほどに、甘いものへの煩悩が消失してしまいました。
平日ランチもご飯などの主食なしの弁当(卵・肉・野菜)がメインになり、一日を通して糖質の多いものを食べない生活に変わってきています。
…まあ週イチ位は息抜きでラーメンを食べに行ったりしていますが、その程度です。
そんな中、最近興味を持ちだしたのが『脂質』
一般的にはまだまだ『太る』『摂りすぎは病気になる』というイメージが強い脂質ですが、身体にとっては絶対に必要な栄養素ですし、最近では健康やダイエットへのプラスの効果も色々分かってきています。
ここ最近だと日本では実業家の金森重樹さんが有名ですが、『断糖高脂質食』ダイエットも広まりを見せていますね。
『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂”ダイエット』 金森重樹(著)
↑かなり極端でストイックな手法なので、そのまま真似るにはまだ勇気が足りませんが、納得させられる部分が多い本です。
余談ですが著者の金森重樹さんは普通の人なら自殺してもおかしくない借金地獄から、猛勉強&徹底的な頭脳勝負で超富裕層に這い上がった超人なので、断糖高脂質のようなとんがった事を徹底的に突き詰めておられるのも、この人らしいな、と思います。
普通に読んでいて面白い。
断糖高脂質ダイエット派は文字通り糖質を徹底的に断ってエネルギー源の脂質を大量に摂るダイエット法ですが、病的な肥満から数か月で数十キロも筋肉を減らさず減量できたり、肌や身体の調子が良くなったりと多くの人が効果を実感されています。
このように『脂質=悪』という従来の常識のままでは説明がつかないことが徐々に明らかになってきているので、脂質についても学んでおきたいと思ったのです。
今回は自分用のメモを兼ねているので、またまたマニアックな内容でお送りします。
もう1冊、今回の参考書籍はこちらです。
↑結構ざっくりしてますが、写真や図が多くて入門編としてはとっつきやすい1冊でした。
脂肪を構成するのは『脂肪酸』
脂肪はその成分のほとんどが『脂肪酸』から成り立っています。
脂肪酸にはたくさんの種類があって、油脂によってその構成は異なります。
共通するのはどの脂肪酸も炭素が鎖のようにつながった構造ということ。
炭素の鎖の数や、炭素同士のつながりに2重結合があるかどうか、その2重結合の位置や数の違いで細かく分類されているのです。
脂肪酸の種類
炭素の鎖の数で種類が変わる
最近MCTオイルで注目されているのが『中鎖脂肪酸』という言葉。
『中鎖』があるのだから、『短鎖脂肪酸』も『長鎖脂肪酸』も存在します。
これらは脂肪酸分子に含まれる炭素の数で分類されているのです。
『短鎖脂肪酸』は炭素の数が6以下。
乳製品などに多く含まれています。
『中鎖脂肪酸』は炭素の数が8~10。
ココナッツオイルやMCTオイルなどに多く含まれています。
『長鎖脂肪酸』は炭素の数が12以上のもの。
14から20までのものが多く、種類も豊富です。
2重結合があるかないかでも変わる
炭素は他の原子とつながる手を4本もっています。
脂肪酸の炭素同士は通常は1本の手でつながっていて、他の3本の手はほとんど水素と、あとは酸素とつながっていますが、脂肪酸によっては一か所以上、炭素同士が2本の手でつながっているものがあります。
この2本の手でつながった状態を『二重結合』と言います。
この2重結合がない脂肪酸を『飽和脂肪酸』、2重結合がある脂肪酸を『不飽和脂肪酸』と呼び、その性質は大きく変わるのです。
分かりやすい特徴を挙げるなら、飽和脂肪酸ならバターやラード、ココナッツオイルのように常温で固形になるものが多い点。
不飽和脂肪酸は植物油や魚油に多く、常温で液状のものが多い点でしょう。
飽和脂肪酸は肉や乳製品など動物性のものに多く含まれ、植物油で飽和脂肪酸が豊富なココナッツオイルは少数派です。
過剰摂取は心血管疾患や肥満のリスクを高めると言われていますが、ココナッツオイルやMCTオイルのように飽和脂肪酸が豊富でも健康やダイエットへのプラスの効果が注目されているものもあり、状況は変わりつつあります。
不飽和脂肪酸は、更に2重結合の数によっても分類され、1か所だけのものは『一価不飽和脂肪酸』、2か所以上のものは『多価不飽和脂肪酸』と分けられています。
2重結合の位置によっても変わる
不飽和脂肪酸は、その2重結合の最初の位置でも種類が分かれます。
炭素の鎖の3番目に2重結合があるものは『n‐3系(オメガ3)』。
近年健康への効果で注目されている『EPA』『DHA』『α-リノレン酸』はこのオメガ3に属します。
サンマやサバ、亜麻仁油やえごま油がオメガ3を豊富に含むことで知られていますね。
6番目に2重結合があるものは『n-6系(オメガ6)』。
代表的なのは『リノール酸』。
サラダ油やごま油、大豆油、綿実油など植物油全般に広く含まれていて、体内で合成できない『必須脂肪酸』ではあるものの、普通に生活しているだけで過剰になりがちです。
リノール酸は体内で同じオメガ6の『アラキドン酸』に変化し、細胞を構成する重要な成分となります。
9番目に2重結合があるものは『n-9系(オメガ9)』。
上で記した『一価不飽和脂肪酸』です。
その9割ほどが『オレイン酸』が占めていて、代表選手はオリーブオイル。
オレイン酸は体内で飽和脂肪酸の『ステアリン酸』から合成もされます。
悪玉コレステロールを低下させる作用があり、心血管疾患の予防など健康効果が期待されています。
特にオリーブオイルは長寿で知られる地中海食でも昔から欠かせないオイルですね。
脂肪酸の役割
細胞を構成する
脂肪酸は細胞を構成する重要な栄養素です。
特に脳の神経組織や生体膜(細胞や核・細胞小器官の膜)を構成しています。
この生体膜は不飽和脂肪酸・リン酸・飽和脂肪酸が層を作っているので、飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸もどちらも必要です。
エネルギー源となる
糖質と同様エネルギー源となりますが、同じ量でも脂質の方が多くのエネルギーを生み出すことができます。
糖質制限をすると従来のエネルギー源だった糖が不足するので、その分を脂質に置き換える必要があります。不足が進むとせっかくたくさん摂ったタンパク質が分解されてしまいます。
ちなみに速攻のエネルギー源として使われやすいのは長鎖脂肪酸よりも分解の早い短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸です。
コレステロールの材料になる
コレステロールはいまだ悪者にされがちですが、体に欠かせない物質です。
細胞膜にも含まれますし、ホルモンや胆汁の材料にもなります。
体内のコレステロールは食事から摂った分はごく一部で、体内で必要な量が生成されています。
体脂肪につながる摂りすぎの一番の原因は、脂質よりも糖質。
脂質は長い間、健康を害し肥満の元になる『悪玉』扱いされてきました。
確かに脂質はそのまま体脂肪と結びつきやすいイメージではありますが、私たちを悩ませる体脂肪は本当に食べた脂質によるものでしょうか。
実は飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は、食べた脂質からのみでなく、食べた糖質からも体内で合成されます。
糖質を食べると血中のブドウ糖の濃度が上がり、血糖値を下げるためにインスリンが分泌されますが、このインスリンは使いきれなかったブドウ糖を中性脂肪として体に蓄えてしまいます。
人類は長い歴史のほとんどが飢餓との闘いだったので、貴重な糖質をエネルギー源として備蓄するためにはなくてはならない働きですが、人類史上あり得ない程糖質過剰な現代においては却って健康を害する原因ともなります。
人間が農耕を始めて穀物を主食とするようになったのはおよそ1万年ほど前からと言われていて、それ以前はずっと野生の動物や魚、木の実などの狩猟採集生活を送る旧石器時代が約200万年も続いてきました。
その旧石器時代の人間が食べていたのは動物や魚、木の実など野生の植物がメイン。
植物性の食物も現代の穀物や野菜、果物に比べたらはるかに糖質が少なく、そのため虫歯や歯周病、歯並びの崩れなどもほとんどなかったそうです。
腸の長さも肉食に適していますし、人類は本来、低糖質・高タンパク・高脂質の食生活に適応した生き物と言えるでしょう。
血糖値を直接上げるのは糖質のみのため、食べすぎたらすぐ体脂肪になりやすいのは脂質ではなく糖質の方なのです。
現代のバランスが良いと言われる栄養バランス(糖質6:タンパク質2:脂質2)とは大きく異なりますね。
オメガバランスや量も大事
脂質は悪玉ではないことを書いてきましたが、摂り方によっては健康に悪影響を与える場合もあります。
特に重要なのはオメガ3とオメガ6のバランスです。
旧石器時代、野生動物や魚で豊富な脂質とタンパク質を摂っていた時代はオメガ3と6の比率はおよそ1:1だったと言われています。
けれど現代においてはその比率がオメガ6に大きく偏ってしまっています。
オメガ6は外食や菓子・総菜・レトルトなど加工食品などにふんだんに使われ、知らないうちにたくさん食べていることが多いです。
オメガ6が必須脂肪酸とはいえ、現代人は摂りすぎのほうに気を付けなければならず、逆にオメガ3は不足しがちなので意識的に摂らないとバランスが悪くなります。
オメガ6の摂りすぎが良くないのは炎症を促進しやすい性質があるからで、一方オメガ3は逆に炎症を抑える作用があります。
また不飽和脂肪酸全般に言えることですが、呼吸で取り入れた酸素と結合して自動酸化が起こりやすいという問題点があります。
自動酸化でできるのは体に有害な過酸化脂質。
細胞膜の透過性を低下させて栄養素が細胞内に届きにくくなったり、血液中に増えれば血液の粘度が上がって血行が悪くなり、頭痛や肩こりなどの原因にもなります。
一方で飽和脂肪酸は不飽和の部位がないので酸化はされにくいです。
未だに飽和脂肪酸は不飽和脂肪酸より体に悪いというイメージが強いですが、不飽和脂肪酸が自動酸化されやすいというデメリットは忘れてはならない点です。
不飽和脂肪酸の自動酸化を防ぐには、ビタミンEなどの抗酸化物質をしっかり摂ることも重要ですね。
ビタミンやミネラルも大事
糖質から脂質をエネルギー源にシフトするにも、脂質が細胞内でエネルギーに作り替えられる際にはビタミンやミネラルが必ず必要になります。
糖質でも脂質でも、それがエネルギーに変わるには細胞内で様々なビタミンやミネラルと反応しながら何段階もの化学変化の過程を経なければなりません。
いくら糖質を断って脂質をたっぷり摂るようにしても、エネルギー代謝に必要なビタミンやミネラルが不足していたら代謝が滞り、エネルギー不足になってしまいます。
特にビタミンB群(プラス、B3のナイアシンは単独でも追加)、C、鉄、マグネシウムといったエネルギー代謝に使われる栄養素は必須です。
更に細胞膜を構成する不飽和脂肪酸は、酸化しやすく細胞膜の透過性を低下させるので、それを防ぐビタミンEも大事ですね。
まとめ
今回は脂質について基礎的な部分をまとめてみましたが、まだまだ奥の深い世界です。
脂質は体にとって絶対に必要な栄養素ですし、摂り方に気を付ければダイエットや美肌効果も期待できますが、今まで通り糖質過多な食生活を続けたまま脂質の量を増やしても、かえって太るだけです。
(これは糖質過多なまま高タンパク食をプラスした場合にしてもそうですが)
私も糖質制限を続けて糖質の量をだいぶ減らせてきたので脂質の摂取量を増やしていますが、まだまだ手探り状態です。
ただ脂質を増やしたことで少量の食事でも空腹感があまり出なくなったなど、少しずつ実感を感じているので、これからも脂質についても知識を増やして実践していこうと思います。
それではまた。