ファッション

「私を美しく変えるクローゼットのつくり方」感想。生き方は服に表れる。

こんにちは、みりりっこです。

今回は、ジェニファー・バウムガートナー著
「私を美しく変えるクローゼットのつくり方」の感想です。

「『見た目』を変えると『生き方』も変わる」


この本の帯にはこんなコピーが記されています。

が、面白いのは、
「『生き方』を変えると『見た目』も変わる」
という現象も同時に起こっている点でした。

「卵が先か、ニワトリが先か」
みたいな状態ですね。

目に見えない「生き方」と目に見える「見た目」。
そのつながりについて、考えさせられる本でした。

著者は心理学者であり、ファッションコンサルタント!?

この本では著者が解決してきた、
様々なファッションのお悩み事例が紹介されています。

でも著者のジェニファー・バウムガートナーさんは、
単に「ダサイ人にオシャレな服を選んで変身させる」
といったファッションアドバイザーではありません。

彼女はこれまでファッションに悩める多くの人を救っていますが、
ファッション業界の人ではなく、心理学者なんです。

彼女が問題解決にあたるときは、クライアントの服装や、
クローゼットの中身を見るだけでは判断しません。

相手の服の買い方・選ぶ基準、生活習慣や対人関係など
丁寧にひも解いて解決策を探っていきます。

その人が抱える心の問題を探り、
その人にあった方法でワードローブを改善すると同時に、
生活習慣や対人関係などの「生き方」そのものにも
変化を促していくのです。

本に登場する様々な悩みを抱えた人々をみると、
服装って、本当にそれぞれの人生の有様を表すんだな~と、
しみじみ思います。

心が迷走している時は、服装も迷走するし。

心が過去に囚われている時は、服装も過去に囚われるし。

クライアントは単にワードローブの問題だけでなく、
自分でも気づかない心の問題に気づかされるので、
コンサルを受けるのも中々勇気が要りそうです。

でも自分の心の問題と向き合い、
新たな一歩を踏み出した人々は、
服装だけでなく生き方も、
本来のその人らしさを取り戻していて素敵でした。

この本に登場する、ファッションに悩める愛すべき人々

「目立つこと、失敗することを恐れて、
地味で無難な服ばかり買ってしまう。」

「ブランド物で揃えているのに、
コーデがちぐはぐで全くオシャレになれない。」

「セール中のショップを見かけたら、
必要なくても服を買ってしまう。」

これは私自身も過去に少なからず体験してきた、
ファッションにまつわる悩みの一部です。

この本には同じような悩みを抱えて、
ファッションにも人生にも、
つまづいている人々がたくさん登場します。

最初の外見だけの描写を見ると、
「ずいぶん極端な人だなあ」と思ってしまうのですが、
事情が分かってくるにつれて、
他人事ではない感覚になっていきます。

皆抱えている問題はそれぞれで、
そのひずみが見える形として現れたのが『服装』だと思うと、
なんだか切なくなってくるのです。

「どうして自分の娘が着るような、
若い子向けの服装ばかりしてしまうのか?」

そう悩む母親は、娘と仲良しでいたいがために、
娘と友達のような接し方をし、
同じような服装をすることに囚われていました。

「どうして収入に見合わないブランド物ばかり買ってしまうのか?
ブランドロゴを身にまとっていないと安心できないのか?」

そう悩む女性は無自覚に、
服装で見下されることを極度に恐れていました。

登場する皆が、
最初は自分の心の問題には気づいていなくて、
カウンセリングを受けたり、課題に取り組んでいくうちに、
問題の本質に気づいていく
様子が印象に残りました。

中でも特に印象的だったのが、
毎日『白衣』ばかり着ていた女医さんのエピソード。

彼女は外出時も自宅でも(なんと就寝時も!)、
とにかく仕事着の白衣ばかり着ていたそう。

仕事人間の彼女は、楽だからといって、
仕事以外の時間もずっと白衣を着る生活を続けていました。

けれどある休みの日、
街でばったりオシャレした同僚に白衣姿を見られて、
突如恥ずかしい思いをしてしまったのです。

「家に帰ってシャワーも浴びてないのか?」
「プライベートの楽しみはないのか?」

こんな風に思われたり、

「当直なのか?」

と尋ねられたり。

彼女がジェニファーさんに助けを求めた時点では、
もう人前に着ていける私服がほとんどない有様でした。

著者は普段の仕事とプライベートのスケジュールを聞き出しました。

すると、彼女は仕事の時以外は、
ほとんど何もしていないことが分かったのです。

ここで彼女はようやく、
単に仕事着をプライベートでも着ているだけでなく、
仕事しかない人生を歩んでいる
ことを自覚したのです。

「バランスの悪すぎる人生は、人生とは呼べない」

彼女はジェニファーさんの力を借りながら、
ワードローブを改善するだけでなく、
生き方そのものを変え始めました。

これまでは職場と自宅を往復するだけの生活でしたが、
仕事と関係ない交流イベントに積極的に参加したり、
同僚ともランチなどで親しく交流したり。

学歴と医師の肩書以外に、
アイデンティティのなかった彼女の世界が、
どんどん広まっていったのです。

そんな新しい人生にふさわしいワードローブを、
著者と彼女は揃えていきました。

新しいワードローブについては、
最早さらりとしか書かれていませんでしたが(笑)、
人生を楽しみ始めた彼女にぴったりな、
素敵な服であることが想像できました。

私が素晴らしいなと感じたのは、
ジェニファーさんがファッションアドバイスでも、
決して自分のセンスや考えを押し付けない点です。

真摯に丁寧に対話を重ね、
相手の望むイメージを引き出し、
一緒に具体的な形を作り上げていく。

それまで囚われていた心や人生の問題から解放されて、
自分が本当はどんな人生を送りたいのかが分かれば、
ふさわしい服装はおのずと分かってくるのかもしれません。

だから相談者は皆、
ジェニファーさんの手を離れても、
自分の望む人生にふさわしい服を、
自分で考えて選べるようになるのでしょう。

最初は軽めのファッションエッセイかな?
と読み始めた本書ですが、
人生についてまで考えさせられる一冊でした。